北海道士幌町の「炭山御神木」 (2003.11.5、2004.6.2、西村さん)


 西村さんから、昨年秋に「来春を楽しみに」とメールを頂いた北海道一位のミズナラの写真が届きました。西村さんの説明文をじっくりとお読みください。
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2003/11/5
  初訪問。車で傍まで行けるのに道が分からず、徒歩で大回りをしてしまった。林間の散策コースの小笹の踏み分け道を進む。「大ナラまであと500m」の看板を見る。大きく広がった太い枝枝が、遠くからも葉の落ちた木々を通してはっきりと識別できる。傍に寄って行くに従って、その威容がぐんぐん迫ってくる。迫力!!さすが北海道1位のミズナラ、葉を全て落として仮眠に入ってはいるが見る者を圧する威厳を放っている。まだ午後3時というのに、太陽は既に大きく傾き、幹を照らす弱い光が冬の到来を感じさせる。立派な説明版が立っている。
 「すみ山のご神木 樹種ミズナラ、所在地士幌町、所有者国有林、幹周り7m50cm、樹高21m、枝張り35m、樹勢 中、樹齢800年(推定)。このミズナラの大木は、戦時中ガソリンの代用として、この地で木炭が盛んに生産された頃、山の神が宿る木として畏敬された。周辺には作業員の宿舎が建ち、炭焼きがまが十数基も築造され、製炭村が出現した。密生する直径1メートル以上の大木が次々と切り倒されて炭として焼かれたが、この三つ又の大木だけは作業員たちが手をふれなかった。毎年12月と1月の12日にはこの木の前に鳥居を造り、お神酒を供え山仕事の安全を祈ったという。あれほど密生していた樹林はすっかり切り倒され、その後営林署によりカラ松が植林されたが、神の木だけはまた生き残った。当時を知る古老は「年寄りたちから、あの木だけは切るな、刃物は立てるな」と固く戒められたという。」
 当時の原生林を見てみたいと痛切に思う。冬眠を覚まさないようにと、そっと触れたごつごつした太い幹はほんのりと温かみを感じる。巨木の周囲は直径20cmくらいの自然石が敷き詰められ、踏み固められないように配慮されている。暗くなる前に車まで辿り着かねばと、何度も振り返りながら帰路を急いだ。道はカラ松の赤茶に紅葉した細い葉が積み重なり、ふかふかと心地よかった。
2004/6/2
 再び訪問、若葉がまだ小さい。ミズナラ特有のぎざぎざが小さくて可愛い印象でした。眠りから目覚めた巨樹の周りをぐるりと回り、根本がかなり痛んでいるのに気付いた。表面はごつごつのがっちりした印象ですが、よく見ると腐食が進んでいます。やはり寿命なのか、この先が心配です。男っぽい荒々しい感じの巨木です。枝枝が暴れまくっている、荒ぶる神の木です。
 十勝平野の北の端にカラ松林に囲まれてひっそりと、だが雄雄しく立つミズナラです。車ですぐ傍まで行けます。士幌町から道道士幌高原線に沿って行きます。何箇所かで曲がりますが、案内板があるので迷うことはありません。士幌高原へ向かいます。町から10数km、右手に新田牧場の看板とJA士幌町牧場管理事務所がある。ここで道道を離れて右折。数百M先の高原牧場で左折、1km弱で左に舗装の枝道あり。これに入ります。1kmほどで大ナラ左折の看板。ここからは砂利の道となる。100mくらいで到着。
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 士幌高原線は士幌町を起点として士幌高原を横断して大雪山国立公園然別湖に至る車道として、1969年に着工されたが、ナキウサギの生息地を通過することから反対運動が起こり、1999年に未開通部分を残したまま工事取りやめが決定された。現在は終点が「ヌプカの里」として整備され、自然を満喫することができる。



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