北海道豊富町の「言問の松」 (2004.2.5、西村さん)


 「言問の松」の素敵な写真が西村さんから届いた。北海道を象徴するような木であり、何時か是非とも訪れたいと思っていた。この松には雪景色が似合っているように思える。明治初期に北海道に入植した祖父のことを思い浮かべながら感動をもって眺めた。以下は、西村さんによる行き届いた説明文です。
*******************************************************
 稚内から車で50分程、サロベツ原野の端、兜沼の西岸にポツンと大木が立っていま す。1200年と言われるイチイの木です。
 兜沼から見て公園の反対側で、道道763号線(兜沼豊徳線)の途中、道路端から15mほ ど離れて立ち、時折往来する車を毎日眺めている巨木です。幹周4.15m、高さ13m。イチイとしては北海道18位です。北海道記念保護樹木、豊富町保護木。幹別れもなく太く大きな樹幹が一本、堂々と伸びる姿はいつ見ても惚れ惚れします。先のほうは多分折れたのでしょう、樹高はそれほど高くはないのですが、樹冠に広がる枝葉が帽子のように程良く見えます。周りは沼と牧草地、道路を隔てて酪農農家と小さな神社があるだけで、見渡す限りゆったりとした隆起のうねる丘陵地帯の真ん中です。昔は多分、原生林が生い茂っていたものと思われますが、今は吹きっさらしの状態です。
 この地域の昔からの事柄を何でも答えてくれる老樹であるということで「言問いの松」と名付けられたとのことですが、樹形もよく、若々しい感じがします。明治42年に秋田から入植した開拓民が、何人も刈り倒そうとするが、その度に怪我をするため、以後神のお告げと信じられてきたとのことです。地元では地域のシンボル・守り神として大事にしており、標板、シメナワの外、毎年の草刈を丁寧に行っています。
 平成元年に樹勢に翳りが見られるとのことで、風上側に大きな防風ネットが立てられました。道北の吹きさらしのこの土地では、冬の吹雪はかなり凄まじいものなので、景観の問題はあっても老樹にとっては止むを得ない処置かと思います。
 沼の反対側を通るJRからも遥か遠くに望むことが出来ます。かなり注意深く見ていな いと見逃しますが。公園を抱える沼のそば、という環境の良さがいつまでも保たれてほしいものと祈られずにはいられません。
 写真は平成15年6月19日と、冬の吹雪の合間の平成16年2月5日に訪れた際に撮ったものです。私の好きな木ですので、稚内への車の出張のときは時間が許せば必ず立ち寄るようにしています。JR宗谷本線の兜沼駅で下りると、約4km程、徒歩で30分以上はかかります。車でないと無理でしょう。
*********************************************************
 JR宗谷本線の稚内から4駅目の「兜沼」で降りると、西側の兜沼を挟んで対岸に言問の松を見ることが出来る。駅からは約1.5kmの距離である。ただし、兜沼に止まる列車は一日に5本程度しかない。



    上段は初夏の頃、下段は厳冬期

木々のリストへ戻る