神奈川県鎌倉市の「鶴岡八幡宮の大イチョウ」
 (2008.11.28、2009.12(梅本さん)、2010.3.10(梅本さん))


 これまで3度も鎌倉の鶴岡八幡宮を訪れているのに、銀杏の紹介をしていなかった。今日(2010.3.10)の朝刊に鶴岡八幡の大イチョウが、昨夜来の春の嵐で倒れたという記事があり、慌てて、在りし日の姿をupすることにした。最後に行ったのは2年前である。倒れるとは予想できない元気な姿であった。学会が終わって飛び出したが、鎌倉に着いたのは夕刻で、日暮れと争いながらシャッターを押したのを思い出す。金色の紅葉を思い描いて行ったが、残念ながら少し早く、ほんのりとした紅葉しか見ることが出来なかった。
 樹高20m、幹周6.8m、樹齢は1000年余と伝承されており、1955年に県の天然記念物に指定されている。神奈川県最大の銀杏は幹周9mの鶴嶺八幡のイチョウであり、鶴岡八幡宮の銀杏は幹周では劣るが、歴史的には有名で、神奈川県では最もよく知られた銀杏の木であった。1219年鎌倉幕府三代将軍、源実朝がこの銀杏の陰に隠れて潜んでいた公暁(くぎょう)に暗殺されたことから「隠れ銀杏」とも呼ばれてきた。倒木と共に、歴史の証人?が一人亡くなったことになる。人に比べて10倍以上の時代の移ろいを眺めてきた大イチョウにも寿命があるのだと思い知らされた。大往生と言って良いだろう。
 JR横須賀線の鎌倉駅の北北東1kmの、鶴岡八幡宮の石段横にどっしりと立っていた。
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 「木々の移ろい」の相談役を永らく引き受けて下さっている梅本さんは、街路樹や公共樹の調査や対応策の計画もされる樹木の専門家である。鶴岡八幡宮のイチョウについても、以前から衰弱に気付いて注目しておられ、昨年末(73日前)にも写真を撮っておられた。今回の倒壊について梅本さんは次のように語っておられる。「以前から、前傾姿勢だった事は気にかかっていましたが、やはり、長年に及ぶ幹や根株の「腐朽」と、想像以上に加わる「風荷重」、雨による水分の重み、芽吹きの為の水の吸い上げ、等などによって、根元の弱い箇所に、一気に荷重が加わったのでしょうね。負担を軽くするために、軽減剪定を行って大枝も整えられていたのですが、本当に難しいものです。」 確かに昨年末の写真では、前傾姿勢が顕著である。漫然と巨木を見るのでなく、その樹勢の変化にも目を配っておられたことに感服した。

2010年3月10日午前4時40分頃、大きな音と共に樹齢1000年と言われたイチョウの巨木が倒れた。
下の写真は梅本さんがすぐに出かけて撮られたものである。




昨年末に梅本さんが撮られた写真−前傾姿勢が顕著になっている。



梅本さんの観察
 本来、幹や大枝などから生じる「乳根」(乳柱)は、地球の引力によって、真下に下垂します。しかし実際には、画像の「点線」(乳根の傾斜ライン)でも判る様に、樹幹全体が、海側の南西方向(静御前の舞殿がある方向)に傾斜しています。
 この傾斜に対応して育った乳根が見当たらない事から、根元に問題が生じて「根系の支持力」が弱まり、前傾姿勢が強まったのは、ここ数年である事が推察されます。


2008年に写した写真。まだ元気そうに見えるが..。



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