青森県深浦町の 「北金ケ沢のイチョウ」と 「関の甕杉」
  (2002.7、小森さん)


 7月の小森さんの「北の旅」からの巨木をご紹介しよう。まずは日本一のイチョウの巨木である。東北北部にイチョウの巨木が多いのは不思議であるが、全国10位までのイチョウの巨木のうち、1,2,4,6位が青森県にある。その筆頭がこの「北金ケ沢のイチョウ」で、樹高40m、幹周22.0mは群を抜いている。樹齢は1000年以上とされ、県の天然記念物に指定されている。ちなみに2位の宮田のイチョウは14.7mである。北金ケ沢のイチョウは特に気根が発達しているので、地元ではこのイチョウを「垂乳根のイチョウ」と呼んでいる。
 JR奥羽本線の東能代あるいは弘前から、海岸沿いに両駅を結ぶ「五能線」に乗って、北金ヶ沢駅で降りる。ここから西の山側に10分ほど歩くと、大イチョウが見える。東の山側に歩くと、もう一本の巨木「関の甕(かめ)杉」(樹高30m、幹周8.2m)がある。
 最下段に、小森さんの紀行文を抜粋しました。

日本一の北金ケ沢のイチョウ




近くにある関の甕杉

 大戸瀬崎の千畳敷をぐいんと回り込んだ所に、「北金ケ沢のイチョウ」という日本最大級のイチョウの巨木がある。古代大和朝廷の武将阿倍比羅夫が蝦夷征伐の際、この地に神社を建立し、イチョウを手植えたという由縁から、660年頃と推測されよう。白村江で唐の水軍に破れたのが663年だから、それより後とは考えられない。ということは、このイチョウは少なくとも樹齢1342歳と計算される。だが、銀杏の種から蒔いたとは思えず、苗を植えたならば、1342歳以上であろう。まさに不老不死伝説の証人、生きた化石、千年比丘尼の魂が乗り移った木ではないだろうか。幹周りは22mを越し、多くの垂乳根を下げたイチョウの根元に立つと、じっとりとした湿気を孕んで、千年以上生き長らえてきた老獪さを滲ませているようだ。


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