北海道上ノ国町の「上国寺のエノキ」 (2003.7.9、西村さん)


この木も、エノキとしては北海道で最大の巨木である。この木に初めて出会ったとき、西村さんはマダガスカルに来たかと思われたようである。素敵な説明文が楽しい。
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 上ノ国町の市街から松前へ向かう国道228号線沿いにある上国寺は、古くから続く由緒あるお寺です。お寺に向かって右側後方の山肌にお墓が立ち並び、その後ろは欝蒼とした森になっています。その中に樹齢500年を越える大エノキがひっそりと立っています。他の木々に隠されて、国道やお寺からは見えません。
 お墓の裏に回り、雑草をかき分けながら急斜面を這い上がると、突然目の前にドーンと現れます。アフリカのバオバブに会ったような第一印象でした(行った事はないけれど)。えっ、うそだろう!、と思わず目を疑った程の強烈な印象でした。木肌が白く滑らかで、太くてごつごつした巨体はここが北海道であることを忘れさせます。急斜面を片手を付きながら接近しました。足を滑らせると転がり落ちそうです。巨大な幹に手を掛けて一息つき、現実に戻りました。
 北海道1位のエノキです。幹周520cm、樹高24m、樹齢560年(推定)、上ノ国町開基800年記念名木指定。上国寺は嘉吉3年(1443)真言の行者秀延が開基したものといわれ、エノキは当時の住職が苗木を取り寄せて植栽したものとされています。北海道は明治以後に開拓されたという一般的な常識がありますが、平安の時代から漁業を目的とした人々が移り住み、松前町や上ノ国町などは中でも最も早くから和人が住み着いた所でもあります。上国寺の裏山はその頃に築かれた城砦跡でもあり、現在その発掘作業が進んでいます。本来北海道には自生することのなかった杉、ヒノキなどの大木が多いところでもあります。
 エノキは神が降臨する木と言われるそうです。しかし、この急斜面を選んで植えたというのは少し無理があるようにも思いますがどうでしょうか。北海道にはエゾエノキという木がありますが、これはエノキだと思います。両者の違いは私には良く分かりませんが。
 この巨木は本当に滑らかな樹皮です。苔も腐食も全くありません。健康優良児といった感じです。訪れる者を拒むようなこの場所が巨木を人間から守っていたのでしょう。わずかに踏み跡があることから、月に1,2度は誰かが見に来ているものと思います。お寺の奥様と少し話をすることが出来ましたが、奥様は一度も見たことが無いとのことで、ちょっとびっくり。確かに見に行くにはかなり労を要する所ではありますが。
 ともあれ、あと何百年も生き抜きそうな森の主、元気なそして強烈な印象のエノキでした。
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 JR江差線の上ノ国(かみのくに)駅で下車して、国道228号線を南西に向かう。町役場を左に見、天の川を渡り、さらにその倍程度歩くと国道左手に上国寺がある。駅から2km少しあるので、歩くと30分以上かかる。



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